TIPPP’s blog

民訴オタクによる受験生のためのブログです。予備校では教わらないけど、知っていれば司法試験に役立つ知識を伝授します。https://twitter.com/TIPPPLawyer

第12回 「訴訟承継」を理解するためのポイント Part.2~予備試験模試の解説も兼ねて

 

第1 導入

 今回も前回に引き続き、「訴訟承継」をテーマに解説をしようと思います。

 

 前回は、訴訟承継における訴訟状態帰属効をどこまで強く認めるべきなのか、という点についてお話をしました。

 

 今回は、①「参加承継」と「独立当事者参加」の関係性、②「引受承継」と「参加承継」の手続的相違点についてお話しようと思います。

 

 最近、予備校の予備試験模試があったのですが、民訴では以下のような問題が出題されていました。簡単にいうと、以下のような事例です。

 

 Yは、Xに対して甲建物を売却し、Xは代金を支払いました。しかし、Yはこう建物を引き渡そうとしません。そこで、Xは、Yに対して、所有権に基づく甲建物明渡請求訴訟を提起しました。その訴訟係属中に、Xは、Zに対して、甲建物を売却しました。

[設問前段]ここで、Yが、当事者として、Zを訴訟に引き込むためには、どのような手続を採るべきでしょうか。

[設問後段]また、Zが、当事者として、訴訟に参加するためにはどのような手続を採るべきでしょうか。さらに、その参加手続と設問前段の手続との手続規律的な相違点はどこにあるでしょか。

 

 この予備校の模試は受験された方も多いかもしれません。

 その解説の補足にもなるでしょうし、受験生に勘違いが多い分野だとも思うので、以上の設例をたたき台にして、①、②について説明していこうと思います。

 

 

 第2 設問前段

 まず、設問の前段について、多くの受験生が回答することができていました。

 

 すなわち、「Yが、当事者として、Zを訴訟に引き込むためには、引受承継の申し立て(50条1項)をすることが考えられる」という回答です。

 

 この点に関しては、特段説明を加える必要はないと思います。

 

 「まずは訴訟告知をして~」という回答もちらほらありはしましたが、「訴訟に引き込む手段」を聞かれているわけですから、訴訟引受の申し立てをするのが直接的でしょう。

 

 なお、これは模試を受けた方へお伝えしときたいことなんですが…

 実際の模試の問題では、引受承継の申立ての前提として「承継人の範囲」の論証も求められていました。しかし、この点については、ぶっちゃけ設問が舌足らず過ぎて「承継人の範囲」の論証まで求められていると思わなかったとしても無理はない感じでした(僕も書かないと思います…)。なので、「承継人の範囲」を落としたとしても気にしないでください。

 

 

第3 設問後段

  さて、本題はここからです。

 

 設問後段なのですが、「Zが、XY間の所有権に基づく建物明渡請求訴訟に参加する手段」としてはどのようなものが考えられるでしょうか。

 

 これは、回答が6:4くらいに別れました。

 

 「6」が、「独立当事者参加」で、「4」が「参加承継」です。

 

 結論から言いますと、回答として期待されていたのは後者の「参加承継」の方です。

 

 では、この設問について「独立当事者参加」を書いては不正解なのでしょうか。

 

 ここも結論を言いますと、僕からすると、ずばり「不正解」ないし「回答として好ましくない」と考えています。

 

 それがなぜなのか、ということについてご説明していきますね。

  

1 「参加承継」の参加手続上の規律

 さて、ここで確認なのですが、「参加承継をしたい!」と思った参加人は、どのような手続を履践して係属中の訴訟に参加していくのでしょうか。

 

 これは条文をみればわかりますね。

 

 すなわち、参加承継の根拠規定たる49条は、「訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けたことを主張して、第四十七条第一項の規定により訴訟参加をしたときは、その参加は、訴訟の係属の初めにさかのぼって時効の中断又は法律上の期間の遵守の効力を生ずる。」としています。

 

 つまり、「参加承継をしたい!」と思った参加人は、「47条1項の規定により」参加をするのです。もっといえば、「独立当事者参加の方式を借りて」参加をするのです。

 

 なお、本件では、独立当事者参加の方式(47条1項)を借りてZが参加した後に、譲渡人であるXが訴訟脱退することにより、XからZへの当事者の交替が行われることになります。

 

 この「参加承継のためには独立当事者参加の手続を借りる」というのが、参加承継と独立当事者参加の概念の整理を混乱させる原因なのですが、実はそんなに難しい話をしているわけではないんです。

 

 なぜ、「参加承継のために、独立当事者参加の手続を借りる」必要があるのでしょうか。

 

 これは簡単に言うと、「参加承継と独立当事者参加はあくまで別制度なんだけど、独立当事者参加の参加手続の規定が便利だから参加承継にもそれを使わせてやってる」というイメージです。

 

 引受承継については、47条1項を借用したりせずに、その許否を裁判所の許可にかからしめていますよね。これは、引受承継は、参加人が自分から参加していくものではため、独立当事者参加の参加手続を使えなかったからです。

 

 しかし、参加承継については、参加人が自分から訴訟に参加していくわけで、その形が独立当事者参加に似ているから、独立当事者参加の参加手続を借用したんです。

 

 平成8年に民訴法が改正されたことはご存知でしょうか。実は、この改正の際に、独立当事者参加のルートを借用せずに、参加承継も引受承継と同様に裁判所の許可で認めるという案も検討されたそうです(流れたんですが…)。このことからも、参加承継と独立当事者参加が、全然別個の制度である、ということがわかるでしょう。これは、『重点講義(下)〔第2版〕』P565あたりに書いてあります。

 

2 「参加承継」と「独立当事者参加」の使い分け

 さて、参加承継が独立当事者参加の手続的規律を借用しているだけであり、両者は別個の制度だ、ということはわかっていただけだと思いますが、それでは、両者はどのように使い分けられるのでしょうか。

 

 この問題は、両者の参加後の効力の相違と深く関わります。

  

 ここでも結論からいうと、「参加人(譲受人)と被参加人(譲渡人)の間に、権利承継について争いが無い場合には、独立当事者参加ではなく、参加承継として取り扱うべきである」ということとなります。

 

 参加承継と独立当事者参加の参加後の効力の違いとして一番大きいものはなんでしょうか。

 

 それは、「訴訟状態帰属効」の有無ということになります。

 

 そもそも、承継制度自体が、従来の訴訟で積み上げられてた訴訟状態を台無しにすることを防止することにあることは皆さんもご存知でしょう(当事者恒定主義の弊害を回避する、などといわれます)。

 

 このことから、参加承継や引受承継があった場合には、従来の訴訟状態は維持された上で、参加がなされるのです。第11回でも述べたように、被参加人(譲渡人)がなした自白にさえ、譲受人は拘束されます。

 

 しかし、独立当事者参加にはこのような効力はありません。

 

 そりゃそうです。独立当事者参加の一般的なケースでは、参加人が「なんかあなたたち、『俺の権利だ』とかとやかく言ってるけど、それ私の権利だからねっ!」といって参加するのですから、勝手に被参加人がなした自白に参加人が拘束されるのはおかしな話ですから。

 

 つまり、この「訴訟帰属効」の正当化根拠は、「被参加人(譲渡人)と参加人(譲受人)が足並みを揃えていること」にある、ということです。

 

 とすれば、「訴訟帰属効」のある「参加承継」の大前提には、参加人と被参加人が「足並みを揃えていること」、すなわち、「権利承継について参加人と被参加人の間に争いがないこと」が大前提なのです。

 

 逆に言えば、「権利承継について参加人と被参加人の間に争いがある」場合には、それは、参加承継の範疇ではなく、「訴訟帰属効」のない「独立当事者参加」の範疇ということになります。

 

 このように、参加人と被参加人に権利承継について争いがある場合は独立当事者参加、争いがない場合は参加承継、というように整理するのが多数説なのです。

 

 なお、裁判所としては、参加人が、参加の段階では参加承継の形で(独立当事者参加の規律である47条1項を使って)参加したとしても、参加人と被参加人との間に権利承継について争いがあることが後のわかった場合には、「訴訟帰属効」を否定するために、独立当事者参加として扱うという措置をとることになるでしょう。

 

 本問では、XとZの間には、ひとまずは権利の承継について争いはなく、足並みをそろえている状態です。

 とすれば、これを独立当事者参加として扱うのは好ましくなく、参加承継として扱うのが好ましい、ということになります。

 

3 「引受承継」と「参加承継」の手続的相違点

 さて、設問後段では、「参加承継」を使って参加するものと扱うのが適切ということになったとして、これを設問前段の「引受承継」との手続規律的な相違点はどこにあるでしょうか。

 

 この点は、模試を受けた受験生の方も、2割くらいの方が回答できていました。

 

 すなわち、参加承継の場合には、47条4項・40条が準用され必要的共同訴訟になる(51条)が、引受承継の場合には、「同時審判申出」がある共同訴訟の申立てに相当すると認めて41条1項3項を準用する(50条3項、51条後段)ことになる、という回答です。

 

 つまり、参加承継では必要的共同訴訟と同様の規律になるのに対して、引受承継の場合には、あくまで通常共同訴訟と同様の規律になる、ということです(※ もっとも、同時審判として弁論と裁判の分離が禁じられ、裁判の統一が図られることになります)。

 

 なぜ、参加承継の場合には必要的共同訴訟としての規律の適用があるのに、引受承継の場合には(同時審判ではあるものの)通常共同訴訟として規律しか適用されないのでしょうか。

 

 それには以下の理由があります。

 

 すなわち、参加承継も引受承継も、合一確定の必要がある。この点、参加承継については、独立当事者参加の規律を借用できたことで、必要的共同訴訟に関する40条の準用が可能となり、無事に合一確定の要請を満たすことができた。しかし、引受承継については、参加人が自ら訴訟に参加していく形態をとらないため、独立当事者参加の規律を借用できず、必要的共同訴訟に関する40条の準用が不可能であった。そこで仕方なく、同時審判申出共同訴訟の規律(弁論の分離不可)で我慢することにした

 

というものです。

 

 このように、引受承継についても、合一確定の必要から、必要的共同訴訟の規律の準用がしたかったのですが、独立当事者参加の規律を使えないという技術的な問題から、それが実現できなかったのです。

 

 しかし、どちらも参加承継、引受承継、どちらも合一確定の要請に変わりはありません。

 

 そこで、現在は、引受承継にも合一確定を要求すべきとする立場から、立法論として不当であるとする見解(高橋宏志『重点講義(下)〔第2版〕』P573)もあるところです。

 

 

第4 まとめ

 第3は、おまけ程度の話になりましたが、以上が訴訟承継において理解しておこうと便利な考え方の整理となります。

 

 訴訟承継については、教科書を漫然と読んでいるだけでは、なかなか学習すべきポイントがおさえられないのですが、このように別の制度との横断的な比較をすることで、頭に入りやすくなると感じております。

 

 

 

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