TIPPP’s blog

弁護士1年目。民訴オタクによる受験生のためのブログです。予備校では教わらないけど、知っていれば司法試験に役立つ知識を伝授します。https://twitter.com/TIPPPLawyer

第11回、12回補足〜「参加承継か、独立当事者参加か」

 

第1 導入

 前回、前々回の訴訟承継の問題に関して、以下のような質問をいただきました。

 

 要約しますと、すなわち、

 

譲渡人たる被参加人が訴訟係属中になした裁判上の自白についての訴訟状態帰属効を、参加人として回避するために、独立当事者参加を用いることはどうしてもできないのか

 

という内容です。

 

 大変興味深い内容です。僕なりに考えてみたので回答します(参考になればいいのですが…)

 

 

第2 参加承継の「訴訟状態帰属効」 

 前提として、第11回で書きましたが、僕的にはやはり、訴訟承継の場合にはやはり、訴訟状態を引き継ぐべきと考えています。

 というのも、訴訟係属中にその権利関係を承継した場合には、自白を含め譲渡人がなし得る訴訟行為のリスクが織り込まれた権利関係を承継したものと考えることができ、そのリスクや不利益は譲受人たる承継人が負担するべきだと考えるからです。

 その意味で、例外的に訴訟状態帰属効を否定するという予備校の考え方に対して、僕は否定的です。

 

 そのことを前提に、訴訟状態帰属効を否定すべく、(参加承継ではなく)独立当事者参加の道を選び得ないのか、という点についてお答えします。

 

 

第3 権利主張参加の可否

 権利の承継があったことは認めつつ、(自白の点についての訴訟状態帰属効を否定するために)独立当事者参加をしたいと考える参加人としては、①権利主張参加、②詐害防止参加の2つの選択肢を考えるでしょう。

 

 そして、①権利主張参加については、やはり否定するべきだと考えます。

 承継人としては、係争物を訴訟係属中に譲り受けたと主張しているのですから、譲渡人だと参加人自身が主張する者の形成した訴訟状態を、参加人が引き継ぐのはやむを得ないといえるからです。

 

 

第4 詐害防止参加の可否 

 では、②詐害防止参加についてはどうでしょうか。

 これについても、肯定説と否定説が別れていますが、僕的には否定説に納得しています。

 というのも、第11回にも書いたように、115条1項2号が「完成した既判力の拡張」の問題であることとパラレルに、訴訟承継は「生成中の既判力の拡張」の問題として捉えることができます。

 そして、115条1項2号の場合に、「馴れ合い訴訟」であることを理由に、既判力の拡張を否定するというのは困難といえます。なぜなら、いわゆる「欠席判決」を馴れ合い訴訟の最たる例としてあげることができますが、欠席判決がでた場合に「馴れ合いであるから」という理由でその既判力の拡張を否定するということは、現実的にかなり困難です。

 このように、口頭弁論終結後の承継人との関係においては、承継人は従前の訴訟状態及びその結果としての判決効から生じる不利益を甘受せねばならない立場に置かれているのですから、これとパラレルに口頭終結前の承継人も訴訟状態の承継を甘受するべきと考えています(これは(高橋宏志『重点講義(下)〔第2版〕』P563に詳しく書いてあります)。

 

 以上のように、権利の承継について争いがない場合には、やはり、独立当事者参加として扱うべきではないと考えています。

 

 

第5 片面的独立当事者と参加承継の関係

 それじゃあ、片面独立当事者参加はどうなんだ!と思うかもしれません。

 

 この点についても補足します。

 

 前提として、参加承継は独立当事者参加の手続を利用してなされるわけですが、その中でも、現行法の下では、参加承継は片面的独立当事者参加の手続を借用してなされます

 

 そして、片面的独立当事者参加は平成8年の民訴法改正で認められた制度なのですが、これは参加承継の参加手続を円滑に認めるために考案されたものであるといっても過言ではありません。

 

 最判昭42.9.27では、片面的独立当事者を明確に否定していました。

 しかし、この判例に対しては、現実には参加人(譲受人)と当事者の一方(譲渡人)との紛争が顕在化していないことも多く、その場合にも、参加人から被参加人(譲渡人)への請求の定立を要求するのはあまりに迂遠であるとの批判がでていました。

 

 そこで、平成8年改正によって、片面的独立当事者が認められたのです。

 

 このように、立法者の狙いとしては、片面的独立当事者を専ら参加承継のための手続として利用しようとしていた、といえます(参加承継の手続について、独立当事者参加の手続を借用するという立法論に問題はありますが…この問題点は多くの学者が指摘しているところです…)。

 

 もちろん、片面的独立当事者参加を参加承継のためではなく、純粋な独立当事者参加としての片面的独立当事者参加として利用したケースも存在する、との指摘はあるのですが、そのケースはごくごくわずかです。

 

 ですから、受験的には、「権利の承継について争いがない場合には、片面的独立当事者参加の手続を利用して、参加承継をする」と考えるのがきれいでしょう。

 

 ここで注意しなくてはならないのは、片面的独立当事者参加の手続を利用したとしても、当事者が「参加承継」としての参加を求める場合には、それは「独立当事者参加」ではなく、「参加承継」であるという点です。

 

 実際に、独立当事者参加の申立書と参加承継の申立書は、各別のフォーマットが用意されております

 

 したがって、当事者が「参加承継」としての参加を申し立てる場合には、片面的独立当事者参加の手続を借用はしますが、それはあくまで参加承継であって、訴訟状態帰属効が認められるということです。

 

 仮に、当事者が純粋な(片面的)独立当事者参加として、訴訟に参加してきたものの、釈明の結果、権利の承継について争いがないことが明らかになった場合には、裁判所としてはそれを参加承継として扱い、訴訟状態帰属効を肯定するという措置をとることになるでしょう。

 

※ なお、「参加承継の手段としての片面的独立当事者参加」と「純粋な独立当事者参加としての片面的独立当事者参加」の違いを言うとすれば、前者は「権利の承継について明確に争いが無い場合」であり、後者は「権利の承継について明確に争いがないわけではない場合」という整理が一応は可能だと思います。もっとも、後者のケースはほぼ想定する必要がないと考えています(「争いがないわけではない」なら片面的独立当事者参加とするより権利主張参加とする方が自然でしょうし。)

 

 

第6 まとめ

 少し説明が迂遠になってしまったかもしれませんが、まとめると以下のようになります。

 

  1.  まず、権利の承継について争いがない場合には、権利主張参加は認められない(理由は上述)。
  2.  次に、権利の承継について争いがない場合には、詐害防止参加も認められない(理由は上述)。
  3.  片面的独立当事者参加は、そもそも参加承継のために編み出された制度といえるため、受験的には、「純粋な片面的独立当事者参加」(=訴訟状態帰属効のないもの)ということは考えなくてよい

 

 以上です。いや片面的独立当事者参加が制定されたせいで本当に議論が難しくなってますね(^^;

 

 

 これからも質問大歓迎ですので!