TIPPP’s blog

弁護士1年目。民訴オタクによる受験生のためのブログです。予備校では教わらないけど、知っていれば司法試験に役立つ知識を伝授します。https://twitter.com/TIPPPLawyer

第19回 「法的観点指摘義務」の答案上での使い方

 

第1 導入

 今回は、「法的観点指摘義務」について説明しようと思います。

 

 法的観点指摘義務については、弁論主義の章の最後の方でちょろっと触れられているのが普通ですが、比較的最近に最高裁判決がでましたし、「弁論主義の適用対象とされる事実」絡みで出題されてもおかしくないので、この機会に勉強していただければと思います。

 

 理解の程度はどうあれ、ほとんどの受験生は「法的観点指摘義務」という概念自体には触れたことがあるでしょう。

 

 しかし、いざ尋常に「法的観点指摘義務」について答案を書くことが要求された場合、面食らう受験生も多いのではないでしょうか。

 

 たとえば、

 

 裁判所が法的観点を指摘せずに突如としてアクロバティックな法律構成を採って一方当事者を勝訴させた。

 

という設問がだされたとき、

 

「お、今回は裁判所の事実認定が問題となっているわけではないから弁論主義の問題ではない…ということは、法的観点指摘義務の問題だな!勝ったぞ!!」

 

と、出題者の意図までは読み取れる受験生はそれなりにいると思います。

 

 しかし、実際に答案を作ろうとすると、

 

「~~。よって、法的観点指摘義務に反し、本件判決は違法である。」

 

とお茶を濁した回答をしてしまう人が多いのではないでしょうか。

 

 「法的観点指摘義務に反する」とした場合、具体的に民訴法のどのような原則、条文に違反して違法となるのか、を考えなくてはなりません。

 

 今回は、「法的観点指摘義務に反する」ということが、どのように「判決の違法」を導くのかについて説明します。

 

 

第2 「法的観点指摘義務」とは

 さて、「法的観点指摘義務」の意義・定義については、皆さん自分なりの認識を有しているとは思いますが、とりあえずは僕の理解を示します。

 

 ずばり、「法的観点指摘義務」とは、

 

 裁判所が当事者の気付いていない法的観点を判決の基礎としようとするときは、裁判所は、その法的観点を当事者に向かって開示し、当事者との間で法的観点・法的構成についても十分に議論を尽くすべきであるという義務

 

です。

 

 法的観点指摘義務は、事実の法的評価が当事者と裁判所の間で共有されていない場合に問題となると言われます。

 

 弁論主義の第1テーゼ(=裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることは出来ない)も当事者に対する不意打ち防止をその理念に置きますが、法的観点指摘義務も目指すところは同じです。

 

 以前、第10回の記事(「弁論主義が適用される事実 Part.2」)で、「弁論権」という概念について説明したことがありました(オタク概念なので別に見返さなくてもいいです(笑))。

 

 弁論権とはドイツで誕生した概念(←)なのですが、弁論主義や処分権主義といった、民訴法の諸原則の「高次の概念」とされているもので、簡単にいうと「不意打ちの禁止」を内容としています。

 

 つまり、民訴法のあらゆる諸原則は「不意打ちの禁止」の要請に反してはならないものと考えられているのです。

 

 このように、弁論主義(の第1テーゼ)は事実認定の場面で、法的観点指摘義務は法的評価の場面で、それぞれ弁論権の要請に応える形で、不意打ちを防止し、当事者の手続保障の要請を適えようとしています。

 

 

第3 「法的観点指摘義務」と「弁論主義」の関係

 第2に書いたように、弁論主義の第1テーゼと法的観点指摘義務は、「不意打ち防止」という目指すところは同じですが、それぞれ適用場面が異なります

 

 しかし、かつての判例には、本来ならば法的観点指摘義務の守備範囲とされるべき、裁判所の法的評価の場面で、「弁論主義違反」とされたものが存在しています。

 

 一番有名なものは、最判昭41.4.12です。一応確認しておきましょう。

 

 同判例は所有権抹消登記手続請求事件ですが、その事案の内容は以下のようなものです。

 

 Xは、本件土地はもともとXの所有物であったがY1に代物弁済で移転し、その後、Aから出たお金でXがY1から買い戻したと主張した(X→Y1→X)。

 これに対しY1は、もとXの所有物であったが代物弁済でY1に移り、その後Aに移転した。ただしXが一定期間に95万円をAに持参すればXに売り渡すという約束つきであったところ、Xがそれを履行しないのでAの子Y2名義で登記したと主張した(X→Y1→A[Y2])。

 これに対して、裁判所(原審)は、XはAから借りた金でY1から買い戻し、それを直ちにAに譲渡担保に供したと認定した(X→Y1→X→[譲渡担保]A[Y2])。

 そこで、Aへの譲渡担保は当事者からの主張のない事実であるとして、上告された。

  • Xの主張 「本件土地はX所有であったがY1に代物弁済で移転し、その後Aの資金でXがY1から買い戻した」【X→Y1→X】
  • Y1の主張 「本件土地はX所有であったが代物弁済でY1に移転し、その後Aに移転した。ただしXが一定期間に95万円をAに持参すればXに売り渡すという約束があったところ、Xがそれを履行しないので、Y名義で登記した」【X→Y1→A[Y2]】。
  • 裁判所の認定 「本件土地はX所有であったが代物弁済でY1に移転た。その後、XはAから借りた金でY1 から買い戻し、それを直ちにAに譲渡担保に供した」と認定した【X→Y1→X→〔譲渡担保〕A[Y2]】

 

 かかる事案について、最高裁は「原判決は、当事者の主張のない事実によりXの前記請求を排斥したものというべく」と論じ、弁論主義違背、破棄差戻しとしました。

 

 このように、この判決は弁論主義違反としたわけですが、この事案においては、事実そのものは弁論に既に顕れており、弁論主義の第1テーゼの違反はなかったはずである、との評価が有力です(僕としても、この事案を弁論主義違背とするのは不正確であると思います)。

 

 すなわち、「金はAから出ており、その金でY1からXないしA(Y2)側に物権は移った」という生の事実は当事者から十分に主張されていたといえるのです。

 

 そして、その事実をXは〔その金で自分のところへ買い戻したのだ〕と法的に構成し、Y1は〔Xのところへの売渡特約付きでY1からA(Y2)に譲渡された〕と法的に構成し、原審は〔Y1からXに買い戻され直ちにA(Y2)に譲渡担保に供された〕と法的に評価したといえます。

 

 つまり、「金はAから出ており、その金でY1からXないしA(Y2)側に物権は移った」という生の事実は当事者から十分に主張されており、その事実が3とおりに法的に構成・評価できるものであったということになります。

 

 そして、「金はAから出ており、その金でY1からXないしA(Y2)側に物権は移った」という生の事実は当事者から主張されているのですから、弁論主義の第1テーゼには反しません。

 

 原審の判決が「不意打ち」であるとして当事者が不満を感じたのは、「事実を勝手に認定したから」ではなく、「不意打ち的な法的評価をしたから」であって、これはまさに「法的観点指摘義務違反」が問題となるケースということになります。

   

 この意味で、この事案を「弁論主義違反」とした判決は、用語の使い方を厳密には間違っているといえます

 

※ なお、かつての最高裁は、事実の認定、法的評価が「不意打ちとなる場合」をすべて「弁論主義違反」として整理していた節があります(このことは第10回の記事でも述べました)。

 つまり、弁論主義の上位概念たる弁論権(=不意打ち防止を内容とする)の要請に反する場合が、全て「弁論主義違反」となると考えていたわけで、それ自体、態度としては一貫してはおります。

 ただし、やはり厳密に用語を整理するならば、弁論主義の第1テーゼが事実認定の問題に係るものである以上、裁判所の不意打ち的な法的評価を「弁論主義違反」と評価することは避けるべきだと思います。

 

 

第4 法的観点指摘義務から「法令違反」を導く論理

 さて、ここからが本題です。

 

 法的観点指摘義務が学者の間で大きく論じられるようになり、司法試験においても出題される可能性が高くなっているといわれる現在、「法的観点指摘義務の答案上での具体的な論じ方」を押さえておく必要があります。

 

 「法的観点指摘義務の答案上での具体的な論じ方」とは、僕としては「法的観点指摘義務から『法令違反』という結論を導くレトリック」という意味で書いています。

 

 たとえば、「裁判所の不意打ち的な法的評価による判決が出された場合の法律上の問題点」について論じることが求められた場合、「法的観点指摘義務の不履行により、訴訟手続の法令違反が導かれる」と結論づけたいわけですが、「法的観点指摘義務の不履行」と「法令違反」はダイレクトに結びつくのでしょうか。

 それとも、「法的観点指摘義務の不履行」と「法令違反」の間には何か、条文だったり民訴法上の原則だったりをかませる必要があるのでしょうか。

 

 その点を詰めて考えていきたいと思います。

 

1 「法令違反」の意味

 前提として、ここでいう訴訟手続の「法令違反」とはどのような意味でしょうか。

 

 「法的観点指摘義務の不履行」を主張するのは、裁判所による不意打ち的な法的評価がなされて、それに対して敗訴当事者が不満を抱いている段階ということになります。

 

 ということは、当事者としては「法的観点指摘義務の不履行」を上告理由・上告受理申立て理由として主張することを考えるでしょう。

 

 ついでなので、「上告理由」・「上告受理申立て理由」についても整理しておきましょう。

 

 上告の可否についての条文操作は以下の順番となっています。

 

  1.  312条1項の検討 ➡︎ 判決に憲法の解釈の誤りがあること、その他憲法の違反があることを理由とするときに上告できる(憲法違反)※ どうやら憲法違反は絶対的上告理由とは言わない。
  2. 312条2項の検討 ➡︎ 312条2項各号に掲げる事由があるときも上告できる(絶対的上告理由)
  3. 325条1項の検討 ➡︎ 312条1項、312条2項に規定する事由があるときは、上告裁判所は原判決を破棄し差戻す。
  4. 312条1項・2項の要件を満たさない場合には、318条1項を検討する。 ➡︎ 原判決が最高裁判例と相反する事項を含む場合、その他法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、上告受理申立てが可能。
  5. 325条2項の検討 ➡︎ 312条1項・2項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるときは、原判決を破棄し、差し戻す。
  6. 高等裁判所が上告審になる場合は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反も上告理由となる(312条3項)

 

 まず、①について。詳しくは後述しますが、法的観点指摘義務の不履行があっても、それは憲法上の問題を将来するとまではいえないので、312条1項の問題とはなりません。よって、②の検討に移ります。

 

 ②について。312条2項各号をみればわかりますが、法的観点指摘義務の不履行にひっかけることができる事項はなく、312条2項各号の問題とはなりません。

 また、③の検討は①②のいずれかに該当して初めて問題となります。

 よって、④の検討に移ります。

 

 ④について。318条1項は、「最高裁判所は、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。」としています。

 そして、後述するように、「法的観点指摘義務の不履行」があった場合は「法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」に該当するといえますから、「法的観点指摘義務の不履行」を上告受理申立ての理由とすることは可能でしょう。

 続いて、⑤の検討に移ります。

 

 ⑤について。④で「法的観点指摘義務の不履行」が上告受理申立ての理由とされることはわかりましたが、312条1項・2項の絶対的上告理由がある場合と異なり、上告受理申立てによる上告の場合には、仮にその上告受理申立て理由が認定されたとしても、必然的に原判決破棄・差戻しとされるわけではありません。

 あくまで、その上告受理申立ての理由とされた事柄が「判決に影響をおよぼすことが明らかな法令の違反」である場合に、破棄差戻しが可能になります(325条2項)。

 

 つまり、「法的観点指摘義務の不履行」を理由に「法令違反」を主張するとき、僕らが目指すゴールは、325条2項の「判決に影響をおよぼすことが明らかな法令の違反」ということになります。

 

 このことをしっかりと自覚して論証してください。

 

2 「法的観点指摘義務の不履行」がダイレクトに「法令違反」を導くとする考え方

 さて、本題に戻りますが、「法的観点指摘義務の不履行」と「法令違反」はダイレクトに結びつくのでしょうか。それとも「法的観点指摘義務の不履行」と「法令違反」の間には何か、条文だったり民訴法上の原則だったりをかませる必要があるのでしょうか。

 

 まずは、「法的観点指摘義務の不履行があるから訴訟手続に法令違反が認められる」として、「法的観点指摘義務の不履行」がダイレクトに「法令違反」を導くという見解の妥当性について説明します。

 実は、「法的観点指摘義務」は本来的には、弁論主義や処分権主義といった概念と同様、民訴法の原則の一つとして打ち出されたものです。

 

 つまり、(前述の弁論権という言葉を使うかは置いておくとして)「不意打ち防止」という理念は民訴法全体において貫かれるべきものであって、民訴法のどんな場面でも「不意打ち防止」の要請が満たされなくてはならない、そして、法的評価の場面での「不意打ち防止」は「法的観点指摘義務」という原則として具現化しているのだ!と考えられたのです。

 

 しかし、僕の考えとしては、「法的観点指摘義務の不履行があるため違法である」として、何の条文や原則を介在させずに、法的観点指摘義務の不履行から直ちに判決手続の違法を導くことは好ましくないと思います。

 

 弁論主義や処分権主義といったような、民訴法の大原則として承認されているような規範に対する違反については、その違反自体から(条文をかませずに)判決手続の違法を導いてしまって良いですが、法的観点指摘義務は未だ民訴法上の大原則として承認されているとまでは言えないからです。

 

3 「法的観点指摘義務の不履行」故に「釈明義務違反」とする考え方

 もう一つの見解は、「法的観点指摘義務の不履行があるから、釈明義務違反として、訴訟手続に法令違反が認められる」というものです。

 

(1) 名古屋高判昭52.3.28

 実は、この処理は、それなりに古くから控訴審裁判所においてちらほらと出されておりました。

 たとえば、名古屋高判昭52.3.28では、

 

 「権利濫用の事実(抗弁)は、その基礎となる客観的主観的な事実関係が口頭弁論にあらわれていることで足り、あえて、抗弁として被告が明確に主張することを要するものではないけれども,事実審裁判所が証拠調をした結果、原告の請求が権利濫用にわたると認めた場合には、被告をして右の事実を抗弁として主張するか否かを釈明し、被告が右の主張をした場合には、原告に対しても右の点についての防禦方法を講じさせるなどの処置を経て判決をしなければならない」

 

と判示し、そのような釈明権の行使をせずに原告の請求が権利濫用に当たるとした原審の判断には違法があると判断しました。

 

 第9回の記事(弁論主義が適用される事実Part.1)でもお話しましたが、弁論主義が適用される主要事実とは、「権利の発生・変更・消滅という法律効果の判断に直接必要な実体法上の要件事実に該当する具体的事実」です。

 

 つまり、「権利濫用の抗弁」においては、権利濫用を基礎づける具体的事実こそが主要事実ということになります。

 

 したがって、「権利濫用を基礎づける具体的事実」に弁論主義が適用されるされることになり、その事実をもって「権利濫用」と評価するかどうかは、法的評価の問題として、裁判所の専権に属し、その法的評価の部分には弁論主義は適用されないことになります。

 

 上記判旨の前段部分で、「権利濫用の事実(抗弁)は、その基礎となる客観的主観的な事実関係が口頭弁論にあらわれていることで足り、あえて、抗弁として被告が明確に主張することを要するものではないけれども…」と述べている内容はそういうことです。

 

 その上で、同判旨は「事実審裁判所が証拠調をした結果、原告の請求が権利濫用にわたると認めた場合には、被告をして右の事実を抗弁として主張するか否かを釈明し、被告が右の主張をした場合には、原告に対しても右の点についての防禦方法を講じさせるなどの処置を経て判決をしなければならない」とし、「権利濫用」という法的評価をするためには、当事者に対してその意向を確認するように求め、これをしなかった原審の判断を釈明権不行使の違法があるとしたのです。

 

 このように、高裁レベルでは、法的観点指摘義務違反的なものを釈明義務違反として処理する考え方が出されておりました。

 

(2) 最判平22.10.14

 そして、ようやく最近になり、最高裁においても、同様の考え方を採るものが顕れました。

 

 それが、最判平22.10.14(重判平成22年民訴2)です。

 

 この判例では、信義則違反を基礎づける事実は当事者から主張されていた中で、原審が当事者の法的主張なくして「信義則違反」と評価したことが不意打ちとなり、違法ではないかが争われました。

 

 そして、最高裁は、

 

 「信義則違反の点についての判断をするのであれば,原審としては,適切に釈明権を行使して,Xに信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに,Yに十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。……原審が,上記⑴のような訴訟の経過の下において,上記⑵のような措置をとることなく前記……のような判断をしたことには,釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

 

としました。

 

 このように、同判例は、裁判所が「訴訟の経過等から当事者に予測困難な法律構成を採る場合」には、法的構成の当否も含めて当事者に十分な攻撃防御の機会を保証すべき手段として釈明義務を認めており、実質的に、法的観点指摘義務を釈明義務に含めることを認めた判決として評価することができます(上記重判解説)。

 

 結論としては、この判例にしたがい、釈明義務違反をかませて法的観点指摘義務の不履行の違法性を論じるのが無難といえるでしょう。

 法的観点指摘義務それ自体が未だ民訴法上の大原則としてまでは承認されていない状況下においては、何らかの他の原則や条文にかませる形で、その不履行の「法令違反」性を論証しなくてはなりませんが、その梯子になりそうなものといったら「釈明義務」くらいしかないからです。

 

 具体的な論証としては、以下のようなものが考えられます。

 

《論証》

 この点、弁論主義は専ら事実にのみ関わるものであることに鑑みると、事実の法的評価を基礎付ける事実が当事者から主張されている本件では、弁論主義違背はない。

 しかし、弁論主義違背はなかったと理解するとしても、裁判所が採る構成がどのようなものであり得るかを当事者に伝え、それに備えて十分な主張立証活動を保障する方が、不意打ち防止の理念からはふさわしい。こうすることで、弁論主義の上位概念たる弁論権の要請も満たされるというものである。 

 そこで裁判所には、釈明義務の一内容として法的観点指摘義務を認めるべきである。具体的には、裁判所は当事者の気づいていない法的観点で裁判しようとするときは、その法的観点を当事者に向かって開示し、当事者と裁判所との間で法的観点・法律構成についても十分に議論を尽くす義務があると考える。

 そして、法的観点を指摘せずに裁判した場合には、釈明義務違反として破棄差し戻し事由になると考える。

 

 なお、「法的観点指摘義務の不履行は釈明義務違反となる」と考えて、法的観点指摘義務を実質的に承認するにしても、裁判所は当事者の議論の結果に拘束されるわけではないことには注意して下さい。

 すなわち、生の事実は出ている以上、法律解釈の最終責任を負う裁判所は、自己の法的見解を優先させて判断して良いのであり、法的観点を指摘しさえすれば、当事者がその法的観点に自分の主張を乗せてこようと、こまいと、裁判所は自由な法的評価が可能なのです。

 

 あくまで、「指摘しさえすれば良い」ということになります。

 

 

第5 まとめ

 今回は、「法的観点指摘義務の答案の具体的な書き方」について説明しました。

 

 弁論主義といった主要論点の亜種として十分に出題可能性のある分野なのでおさえておいてください。

 

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